ミステリーにおいて『トリック』とは、『犯人が犯行を隠蔽するための仕掛け』のことを指しますが、叙述トリックは異なります!
簡単に言うと叙述トリックとは、『作家が読者を騙すためのトリック』です。
叙述トリック
まずは、叙述トリックについて詳しく解説する前に簡単に言葉の意味からおさらいしていきましょう。
叙述とトリック
叙述
- 意味:物事や意見を順序どおりに述べること
- 対義語:口述
- 類義語:記述
トリック
- 人を騙す目的の謀(はかりごと)や仕掛けのこと
- 推理小説では犯罪行為を隠蔽するための詭計、たくらみ
叙述トリックの意味
ミステリー小説において『トリック』というと、『犯人が犯行を隠蔽するために行う仕掛け』が一般的ですが、叙述トリックは異なります!
簡単に言うと叙述トリックとは、『作家が読者を騙すためのトリック』です。
信頼できない語り手
叙述トリックを説明していくうえで、『信頼できない語り手【unreliable narrator】』というワードも欠かすことができません。
ここでは、『信頼できない語り手』について説明します。
信頼できない語り手とは
信頼できない語り手とは、「小説・ドラマなどの物語を進める手法の1つ」で叙述トリックの一種です。
信頼できない語り手の効果として、語り手の信頼性を低くすることで、読者・観衆を惑わせたりミスリードしやすくさせます。
読者が語り手を信頼できなくなる理由として、語り手の心の不安定が重要です。
- 精神疾患
- 強い偏見
- 自己欺瞞
- あいまいな記憶
- 酩酊
- 知識の欠如
- 限られた視点(神の視点ではない)
- 妄想
- 夢
など、様々なケースが存在しています。
叙述トリックについて詳しく解説
叙述トリックの例
叙述トリックは、『文章上のトリックによって読者のミスリードを誘う手法』のことです。
小説の中における『暗黙の了解』、前提・偏見を利用したトリックで、
前提条件として記述されている文章は正しい、という認識を逆手に取ったものが多い。
具体的な例として、
- 登場人物の性別や国籍、話し方
- 事件の発生した時刻、場所
を意図的に伏せることで、読者の先入観を利用し誤った解釈(ミスリード)を与える。
もう少し具体例を詳しくすると、
- 登場人物の名前をユニセックスな名前にし、まるで男性かのように振る舞う。
⇒しかし、実は女性だった…!
- 被害者は家で殺されていた、(被害者の自宅なのだろう…)
⇒実は、別の家で…!
- 回想シーンをまるで、現在の話のように記述
⇒時間軸を入れ替えることで、時系列を誤認…!
- 実は誰も存在していない
⇒実は幽霊で、読者にしか見えておらず登場人物は誰も認識していない…!
という具合で叙述トリックは使用される。